御車山祭り 御馬出町 T
古城公園の花見の賑わいが終ると、五月一日は待ちに待った御車山祭り。朝早くから組立や飾りつけが始まり、地山は華麗豪華な御車山に変わります。
奉曳にお供する人は、一文字笠を手に紋付裃の正装で山の前でお祓いを受け子供達が黒紋付裃姿で山の上に乗り、御祭神の前に座ってから曳き始めです。
昔は「山の囃子が聞こえて来たや! 早う着替えてお迎えせられ!」と母に言われて急いで帯を結び玄関前で山を待ちました。山役員であった父が奉曳のお供から早めに戻り、見物客も増え始め、お囃子の音も大きくなり拍子木の合図で山が家の前で止まり、お囃子はお神楽に変わり所望となります。父の嬉しそうな横顔に、私は幸せな安らぎを感じていた事を、今でも懐かしく思い出しています。
祭りに表立つことのない女の私は、御車山が先人の文化的遺産として歴史の流れの中に息づき伝承されている喜びを、お囃子の音色・車輪の軋み・鈴棒引や拍子木の響き・町角を曲がる時の大きな掛け声、そして奉曳のお供や見物の人の瞳の中に感じます。その心は「まつりのこころ」で結ばれて祭りを盛り上げ、親から子へ子から孫へと引き継がれていくのです。